2015年12月14日月曜日

ザ・ウィークエンド「King of the Fall」〜全部ゴックンさせるんだ



 アルバムが一周したのに「その曲」を聴いた覚えがないので、もしかしたら聴き逃したのかもしれないと思い、トラックリストに目を通すも、やはりその曲は見当たらない。なぜだ? ザ・ウィークエンドの『Beauty Behind the Madness』(15年)に、「King of the Fall」が収録されていないのだ。「King of the Fall」は、アルバムに先駆けて2014年にザ・ウィークエンドが発表したシングル曲である。もちろんアルバムに収録されるものだと思っていたら未収録だったので、面食らってしまった。お気に入りの曲でくり返し聴いていただけに、残念でならない。ミュージックビデオまで作られていたのに。ただ、それでもアルバムを何周か聴くうちに、この作品がこれまでのザ・ウィークエンド作品とは違うことに気づき始めた。一言で言うと「売れ線」なのだ。すごくキャッチーな作りになっている。でも、やっぱりズブズブでドロドロでエロエロでこそ、ザ・ウィークエンドという気がしてしまう。そんなことを考えていたら、エイベル・テスファイ本人が「ニューヨーク・タイムズ紙」のインタビューで、売れることを狙って作ったと発言しているではないか。「世界の頂点を獲りたい(I absolutely wanna be the beggest in the world)」と決意したエイベルはレコード会社のA&R、ウェンディ・ゴールドスタインに助言を求め、近年のヒット作請負人として知られるスウェーデン人プロデューサーのマックス・マーティンの制作チームと仕事を始める。流行りのディスコ調サウンドを取り入れたり、歌詞もそれまではすべてエイベルが書いていたのを、今回はソングライターと共作するなど新しい試みをおこなっている。そうして完成したのが『Beauty Behind the Madness』である。狙い通り、新生ザ・ウィークエンドのアルバムは見事に大ヒットを記録する。この年のグラミー賞でも「最優秀アルバム部門」に本作はノミネートされた。けれど、以前までのもち味だった闇や毒っ気が薄められたことによる物足りなさは否めない。女性をことば巧みに誘い込んで情事に耽るザ・ウィークエンドが恋しい。さきほどの「ニューヨーク・タイムズ紙」のインタビューによれば、素人時代のエイベルの生活は荒んでいて、近所のスーパーで万引きを犯し、喧嘩に明け暮れ、MDMA、ザナックス、コカイン、マッシュルーム、ケタミンなど、ありとあらゆるドラッグに溺れ、毎晩のようにハイになっていたそう。大麻を売って日銭を稼ぐも、いつも無一文だったらしく、住むところに困ったときは女性に「愛してる」とかなんとか声をかけて泊まらせてもらっていたとか。「俺のことを本気でボーイフレンドだと思う女性三人と付き合っていた」とはエイベルの談。って、それ全部歌詞のまんまじゃん!
「King of the Fall」がアルバム未収録なのは、内容が「売れ線」路線に反するからなのだろう。それにしても「King of the Fall」の大サビは強烈だ。ビューティなんて微塵も感じさせない、マッドネス全開の世界。これぞ、ザ・ウィークエンドの真骨頂。

俺の女たちは調教されている 俺は全部ゴックンさせるんだ
全部ゴックンさせるんだ
全部ゴックンさせるんだ
全部ゴックンさせるんだ
一滴残らずゴックンさせるんだ


The Weeknd - "King of the Fall"



 

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